運転手は自己紹介で「アベルさん」と名乗った。僕が日本人である事を知っていて自分の名前に「さん」という日本語をつけたので日本人観光客に慣れている感じがした。年齢は45歳で子供が3人いるとの事だった。英語は片言しかできなかったが音楽はどれが好きかとか、暑くないかとか気にかけてくれる優しい運転手だった。勿論、1000ポンドという値段が相場より高いのでサービスしてくれたのかもしれないが。
そして最初の目的地ピラミッドに向かった。
向かう途中で川にかかる橋を通る。あ、もしかしてナイル川?僕はそう思ってアベルさんに聞くと、そうだという。「ごめん!見たいから止めて」とお願いしたら橋の真ん中で止めてくれた。別に橋を過ぎて止めてくれても良かったのだが、幸い3車線だったので迷惑にはなりそうに無い。
橋の欄干からナイルを覗いた。川幅は確かに大河川だ。ただ想像より広くはなかった。何より驚愕したのは、水の色味だ。歴史の授業でヘロドトスの言葉「エジプトはナイルの賜物」と習ったようにエジプトが発展したのは上流の肥沃な土をナイル川が運んできたからという浅い知識があったので泥にまみれた茶色の色味を想像してたのだが
実際は何メートルの上の橋から見ても魚が泳いでいるのを確認出来るくらいに透き通っていた。しかも土壌を運んで来るくらいの激しさはなくサラサラと流れていた。
もしかすると雨季では無いとかそういう理由なのかもしれないが想像と違いすぎていた。5分程そこにいて眺めていたが乾燥と暑さですぐにクルマに戻ってアベルさんに冷房強くして。とお願いしたらアベルさんは声を上げて笑った。
この国で太陽は絶対的な存在だった。
エジプトの旅は成田からアブダビ経由でカイロに入り、その日のうちに電車でルクソールに南下して一泊、次の日夕方に更にアスワンと南下して1泊、次の日アブシンベル神殿を見てから空路でカイロに再度戻るというルートを取っていたのだが、旅の期間中4日間に雨が降る事は一切なく太陽は何処にいても灼熱の煌めきを放出していた。
吹き荒ぶ風には微量の砂が混在していて、時に口の中にジャリっとした鬱陶しい音と感触を発生させた。その砂でさえ太陽の存在に跪くかのように微かな熱気を帯びていた。
当然のように歩く度に汗が額や背中や今までに体験した事の無いような部位から多量に産出していて衣服を汚した。太陽の威力は気温だけでなく大地さえも乾燥させていて靴の裏に張り付いているサラサラとした砂は一切の水気がなく真夏日にアスファルトに触れたかのようなエネルギーを内包していた。それは、熱傷でも起こしそうな熱さだった。
ある意味、太陽はこの国を支配しているようにも思えた。実際にエジプト神話においても太陽神ラーの涙から1番最初の人間が産まれただとされているとアベルさんは教えてくれた。
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シュクラン・ガジーラ!
コメント
ナイル川は透き通っているんですね!
昔エジプト神話の本を読んだことがあります。
太陽神ラーは、頭が隼の男性神でしたね。
当時子供だったのでかっこいいと思いました(笑)