空の上から見たエジプトカイロは、まるで別の惑星にでも着いたかのように眼下に見える木々も大地も建造物も全てベージュ色の砂に覆われているように見えた。エジプトには砂漠というイメージは有ったが、文明の発祥地であるこの都市がこんなに砂にまみれているのは、驚嘆を超えて困惑も生じさせていた。それにしても砂の中に棲み家があるのはなんだか蟻の巣みたいで少し可笑しい気がしたけれど、僕達が住んでいる地球も、もしかしたら宇宙の誰かには小さい蟻の巣みたいに思われているのかもしれない。
シートベルトを閉めるようにと英語の機内放送が流れると、アスワンからカイロに向かうエアバスA330はゆっくりと下降態勢に入った。着陸の際に少し揺れたが無事に着陸した。機体がボーディングゲートに接続するまで機内ではずっと誰かの赤ちゃんの泣き声がしていたが、乗客が降りる準備を始める頃には泣きやんでいた。機内をでるとムワッとした熱気が迫ってきた。荷物を引き取り、入国審査を済ませて空港の外に出る時には全ての上着を脱いでシャツ一枚になっていた。それでも背中に一筋の汗が流れ落ちるのを感じた。
カイロの町は喧騒の中にあった。バイクと車が縦横無尽に行き交っていた。クラクション
の音がひっきりなしに聞こえる。容赦のない日差しと暑さで背中だけでなく額にも汗が流れた。僕は8月という最悪の季節にエジプトに来てしまったのかもしれない。
空から眺めていた時と同じで商業施設や住居らしき建物の外装は全て砂色で、僕は荒廃した廃墟の街にでも置き去りにされてしまったかのような感覚に捉われた。
それはモルヒネのような鎮痛剤を注射する前の不安感にどこか似ていた。
僕はタクシーを探した。地球の歩き方ではピラミッドまではタクシーで行ってもそれほど時間とお金が掛からないと書かれていたからだ。タクシーを止めようと手を上げると一台の黄色のタクシーが左にゆっくりと止まろうとしていたのだが、その前を割り込むようにもう一台のピンク色のタクシーが止まった。
二台の車がいきなり止まったので、僕はびっくりして身構えた。両方のタクシーから運転手が降りてくる。割り込みをしたピンクのタクシーからはデップリとした、いかにもアラブ人という濃い顔をした運転手が降りてきた。始めに見えた黄色のタクシーの運転手はヒョロっとした気弱そうな運転手だった。僕はその2人に囲まれた。更に身構えた。(2)に続く
最後までお読み頂き有難うありがとうございます。
記事は如何でしたでしょうか?
ランキング上位を目指してます。面白かったという方は応援ポチお願いします。励みになります!
シュクラン・ガジーラ!
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
コメント
これまでの中国、香港、ヴェトナム、タイ、トルコとは構成が変わり、続編というか早く次が読みたいです。
これまで読んできたありふれた旅行記とは違い、風景や食事ではなく、過去と現在そしてその時の心情も描かれており面白く拝見させていただいております。
ピレッティさん
コメント有難うございます!旅行記を書く予定ではなくて写真撮ってるので写真メインに出来ないんすよね、、、、。あんまり食事やホテル気にしないのでそういう写真も残ってなくて、、、笑
もう20年近く前になりますが、私もエジプトに行ったことがあります。
その時はツアーでカイロ、アスワン、ルクソール、アレクサンドリアと名所と呼ばれる所は一通り訪れました。
最初に降り立ったカイロは本当に喧騒の中でしたね。
「砂漠」や「遺跡」を中心にイメージしていたので、ギャップに驚いた事を覚えています。
自分の旅行の記憶と重ねながら、続きも楽しみに読んでみたいと思います。
エジプト、とても神秘的でたくさんの絶景があるイメージです。
カイロの町は喧騒の雰囲気なんですね!
タクシー運転手、気になる(笑)