運転手のアベルさんはピラミッドに着くと
パーキングに駐車してココで待っていると僕に伝えた。僕はパーキングからピラミッドまで歩いて行き、受付で入場料金を払って入った。入り口付近には数台の馬車とガイドがいたので、幾ばくかのガイド料金を支払い、案内してもらう事にした。ピラミッドと馬車は写真映えすると思ったのと、暑さで歩きたくは無かった。お金を払った場所から少し歩いて馬車がいる場所にガイドに連れられて移動した。馬車を牽引している馬は白馬でディスコという名前の牝馬だった。
名前の理由を聞くとよく踊るからだそうだ。馬が踊る?よく分からなかったがすぐに理由が分かった。ガイドが手綱を引いて馬車が立ち止まった時にディスコは、止まってはいたが落ち着きなくチャカチャカと前足を掻くような仕草をしながら所々黒い斑点のある引き締まったお尻を上下させていた。
それは確かに踊っているようにも感じられた。馬車に乗って5分位経つとピラミッドが見えてきた。ピラミッドは最初、砂山の影に隠れていて見えなかったが馬車が移動する度にその豪壮な姿が見えてきた。遠目に見てもその遠大さを確認できた。
当たり前だが桁違いにでかい。これを何千年も前に建設したのなら確かに凄まじい偉業だ。ピラミッドの視線の更に先には逆光の太陽があった。既に正午はとっくに過ぎていたのだが太陽は衰えることなく燦々と放射能のような光を峻烈に降り注いでいて全てを乾燥させるまで存在しているかのように大地を照らしていた。
そしてもう既に乾いてサラサラのベージュの砂山の地表からユラユラと不安定な陽炎を浮き上がらせていて、その見た目も暑さを増幅させていたが、陽炎越しに見るピラミッドやスフィンクスは蜃気楼のようで本当に遠いところに来たんだという異国情緒と幻想的な雰囲気を醸し出していた。
もしかするとファラオ達はピラミッドを建立する事で自己の偉大さが、絶対的に君臨する太陽よりも優れている事でも証明したかったのかもしれないと思ったりした。
ピラミッドはまるで太陽に対抗するかのようにその壮大さを誇示していた。勿論、ピラミッドの巨大さや異国感は、素晴らしかったが、それでもこの国の太陽という存在には勝てないような気がした。
僕は、入り口付近の売店で飲みものを買わなかった事を後悔していた。ピラミッド付近には風をあまり感じ無かったがそれでも微量に吹いていてそこに内含する砂が時々、僕の口に侵入して、ジャリっとした不快な歯応えと共に喉の乾きを生じさせていた。更には咽頭部から首を通り、胸郭の上部にかけては乾燥による疎ましい痛みも発生させていた。
その上、暑さから軽い脱水症状でも起こしていたのかもしれない。ピラミッドを見ている間はアドレナリンが出て感じ無かったが、見学を終えて馬車に揺られていると、少し頭がふらふらして浮遊しているような感覚に襲われた。もしかするとファラオの呪いなんだろうか?とも考えてしまった。
そう言えば常に暑さに参っていたはずなのに一度、悪寒のような寒気に襲われて身震いした場所があった。
それはピラミッドとスフィンクスの両方入るアングルの位置を探す為に後ろに下がった時だ。更に下がろうとすると後ろにロープが張ってあってもう下がれない。そこはkeep out!と書いていた。目線の先には石が無造作に積み重ねられた場所があり、その中に地下に降りていく階段のようなものが見えていた。その時に悪寒がした。
もしかすると風邪でも引いたかもしれないと不安に思っていた。その気持ちを抱えたまま、ガイドと別れて、出口付近の売店で水を買って一気に飲み干してた。それから歩いて、駐車場に戻るとアベルさんは駐車場で黄色のタクシーのボンネットに腰掛けながら数人のドライバー達と話していた。僕に気がつくと呑気な表情を浮かべて右手を上げて、僕に、「ここだ」と合図した。そしてそそくさと運転席に乗り込んだ。ギュルルルルと少し旧式のエンジン音が駐車場に響いた。その先にピラミッドが見えた。僕はまた身震いした。
最後までお読み頂き有難うありがとうございます。
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コメント
エジプト4話拝見しました。
幼少期に図鑑で見た記憶のせいか、照りつける太陽と砂漠の中でそびえ立つピラミッドの大きさをイメージしましたが、実際の感動が伝わってきます。生命を拒絶するかのような圧倒的な太陽の強さを感じました
ピレッティさん
コメント有難うございます!
今までこんなにジリジリと酷い太陽は初めての経験でした。。。
生命の拒絶とは素敵な表現ですね。
ピラミッドとスフィンクス、実物を近くで見てみたいものです。
悪寒、ファラオの呪いかもしれないと思うと怖いですね、、(笑)